petit amour

まゆかのこと。

食欲の秋

「あれ、今日は弁当じゃないの?」

「ああ、はい。気になってたパン屋さんがあったんで、来る前に買ってきたんです」

「そう」

「朝からずっとお昼が楽しみで……」

「パン好きなの?」

「はい、すごく」

「ま、パン好きの女の子は多いからねぇ……」

「……お嫌いですか?」

「んー、別に嫌いじゃないよ。好きだけど、だいたいコンビニで済ませちゃうから」

「えー……おいしいパン食べると幸せになりませんか?」

「パンじゃなくてもおいしいもの食べると幸せになりますねぇ」

「もう、そうじゃなくて。あっ、そうだ、よかったらこのパンひとつどうですか?」

「え?いいの?」

「はい、おやつに買っておいたんです」

「食いしん坊だなぁ」

「えへへ……はい、どうぞ」

「じゃ、遠慮なく、いただきます」

(もぐもぐ)

「それじゃ、わたしも」

(もぐもぐ)

「……おぉ、これはうまいねぇ」

「ほんと、すごい小麦の味がしっかりしてて、すごく香りがいいですね」

「これ、どこの店?」

「えっと、出て信号渡って、少し下ったところです」

「うん、こりゃいいわ。自分も今度ここのパン買ってこよう。ありがとね」

「は、はい、ふふ」

「ん、なんか喜ばせることいいましたかね」

「いえ、わたしの好きなパンだったので……」

「……?」

「なんでもないです。ふふ……」

「……ん?」