petit amour

まゆかのこと。

それをすてるなんてとんでもない

「大事なものとか、大切にしてるものって、なにかあります?」

「んー、大事なもの?」

「はい、何かあるのかなー、と思って」

「うーん……あー、大事とかじゃないけど、学生時代に買った本で、すっごい気に入ってる本が一冊あって、それはずっと本棚に置いてるなぁ」

「へぇー、読んでみたいなぁ」

「ん、そう?じゃあ貸すよ」

「えっ……いいんですか?大事なものなのに」

「いや、だから大事とかじゃなくて、気に入ってるってだけで……まあ今度持ってくる」

「わあ、ありがとうございます、楽しみです」

「あとは、まあ、気に入ってるレコードかなぁ、ほら、前に聴かせたでしょ」

「え、あれ、レコードも持ってるんですか?」

「うん、音質とかまではわかんないけど、『盤面に針を落とす』っていうのがなんか好きでさ」

「へぇ……なんか素敵ですね」

「そう?そんなたいそうなもんじゃないんだけど、いいよ、レコード。レコード専門店ってCDショップと違ってごちゃごちゃしてないしね」

「へぇー、行ってみたいです」

「じゃあ今度いこう」

「はい、ぜひ!」

「ぼくはまあそんなもんかなぁ、なくなったら困るものはあるけど。そっちは?」

「えっ?」

「いや、聞いたからには、自分もなんか大切にしてるものとかあるんじゃないの?」

「あう……考えてなかったです……」

「おう……なんかある?」

「えー……そうだなぁ……あっ」

「ん、なに?」

「……内緒です」

「えー、ぼく言ったじゃん、ずっこい」

「ぜったい笑われますから」

「恥ずかしいものなの?」

「うーん……なんとなく笑われそうだなぁ、とおもって」

「えー、気になる。自分から聞いた上に、そこまで言って内緒ってずっこくね?」

「えー……どうしよう……」

「ぜったい笑わないので教えてください」

「うー……」

「おねがいします」

「ぜったいですよ?」

「笑ったらなんでもいいこと聞きます」

「うー……」

「ほら、なに?」

「……るみです」

「ん、なんて?」

「……テディベアのぬいぐるみ」

「テディベア?」

「……」(コクリ)

「テディベアが大事なの?」

「……小さいころ、プレゼントにもらって、ずっと大事にしてて」

「うん」

「で、一人暮らし始めたときも……心細いから、連れてきちゃって」

「ふーん。なんて名前?」

「えーと……えっ」

「だって名前つけてそう」

「あうぅ……」

「……」(クスッ)

「!!!いま笑った!!!」

「いや、クク、ごめんごめん、違う違う」

「何が違うんですか!笑わないって言ったのに!!」

「いや、別におかしくてわらったんじゃないよ、真面目だなぁ、と思って」

「えっ?」

「べつにテディベア集めくらい、趣味としてあっていいと思うしね」

「あ、別に集めてるわけじゃ……ひとりしかいませんから」

「それに、よっぽど大切にしてるんだとおもったらかわいいなあ、と思って」

「はうぅ……」

「えっ、どうしたの変な顔して」

「はうぅ、なんでもないですっ!」