petit amour

まゆかのこと。

ごまめ

「今年一年、お疲れ様でした。皆様のおかげで、こうして今年も無事終えることができましたっ。それじゃ……」

「かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「かんぱーい!」

……

「……クゥーッ、しみる〜!」

「みずき、おっさんっぽいわよ……」

「なによー、あんたも飲んだらわかるってー」

「だってあたしは呑めませんから」

「くぅー、最近の若い子はほんっと付き合いが悪いわねぇ」

「みずきちゃん……」

「あ、まゆかちゃんは無理してのまなくていいからねー」

「あ、うん……」

「まったく、みずきは相変わらず調子いいわね……」

「なんか言ったかなぁ?」

「いいえ何も」

……。

「ふぅー、おいしかったー」

「相変わらずごはんはお上手ね」

「ごめんねー、お店のほうがいそがしくて、あまりもの中心になっちゃって」

「ううん、あまりものでこんなになんてすごいよー」

「そうね、あたしも教わりたいわ」

「ん、料理教室しようか?」

「あら、いいの?」

「うちでちょっとやるくらいならいいよー。お店でもそういうことやりたいとは思うけど、ちょっとうまくまとまらなくてねー、まとまったらオーナーに提案してみようかと思ってるけど。カフェのお菓子教室とか、需要ありそうじゃない?」

「うん、みずきちゃんのお菓子教室だったら、あたしも行ってみたいなー」

「じゃあ、今度うちでお菓子作りやりますかー」

「うん」

「いいわね」

「オッケー!……ふふん」

「なんかうれしそうね」

「そんなにうれしいの?みずきちゃん」

「ふふー、まっ、バレンタインも近いしねー」

「ん、バレンタインがどうかしたの?」

「手作りのお菓子をあげたいとか、らしいなーって思っちゃってねー」

「!!」

「うん?何?何の話?」

「ふふふ、実はこの間、まゆかちゃんにクリスマスケーキ売り手伝ってもらったんだけどさー」

「ちょっと……みずきちゃん……」

「んー?あたしに声かかってなかったわね、別にいいけど」

「だってゆかり声張らないからお客さんウケ悪そうじゃん」

「反論はいたしません。別にいいって言ってるじゃない……。で?」

「あ、そんでね、そんとき、たまったままゆかちゃんの会社の先輩さんが来てさ、せっかくだから、休憩がてらお店でお茶してってもらったのよ、そんで小一時間二人でのんびり過ごしてもらってさー」

「うん?それがそんなに恥ずかしがることなの?」

「まだ気が早いっ」

「み、みずきちゃん、も、もういいから」

「だめですっ、これはまゆかちゃんのための状況報告なの!」

「状況報告って……。みずき最近なんの映画見たのよ……。で?」

「あ、そんでね、バイト終わったあと、その人戻ってきて、迎えにきてくれて、二人で食事に行ったんだよ、ねぇー?」

「ほほーう?」

「お店を後にして、二人は夜の街に消えていったのでした。めでたしめでたし」

「ちょっと、変な終わらせ方しないで……」

「あの時もまゆかちゃん真っ赤だったよねーふふーん」

「も、もうー!」

「へえー、まゆかちゃんってその人のこと好きなの?」

「!!!」

「ゆかり……あんたも単刀直入すぎるよ」

「そ、そそそ、そんなんじゃなくて……」

「あ、違うの?じゃあ別にいいんじゃない?」

「この子はほんとに無神経だかなんなんだか……」

「だって、あたしその場に居合わせてないんだもの。みずきの口頭説明だけじゃ状況わかんないわよ」

「ぐぬぬ、わたしたちのかわいいまゆかがついに本当の恋に目覚めようとしているときに、君は何を言ってるのかね!」

「ほ、本当の恋って……ちょっと……」

「みずき、調子に乗りすぎ。落ち着きなさい」

「へーい、ゆかり先生ごーめーんーなーさーいー」

「ったくこの子は……」

「……」

「……まゆかちゃん、顔真っ赤よ」

「うう……」

「あと、手作りだからって本当に喜ばれるかわかんないわよ」

「えっ……」

「えー、ゆかり何言ってんのー、喜ばれるでしょー」

「そりゃ相手がこの子に好意持ってたら、『わざわざ手作りして持ってきてくれたんだ』って喜ぶだろうけど、そうじゃなかったら市販のやつ買っても同じじゃない?」

「ほんっと、味気ないこというねぇこの子は……」

「だって、きょうび手作りより百貨店の……」

「そう……なのかな……」

「えーと……」

(みずき、あたしまたやっちゃった?)

(うん、また合理的な性格が災いした。フォローしなさい)

(はー、われながら難儀な性格だわ……)

「……」

「あ、あのね、あたしが言ってるのは、相手に好意がほとんどない場合で、いわゆる義理程度なら何あげても何もらってもいいかなーっていうだけで、もちろん手作りをすごい喜んでくれる人もきっと中にはいるはずで、でも相手の気持ちはわかんないから、まあ最後はやっぱりまゆかちゃんが何をプレゼントしたいかっていう、そういう気持ち次第なんじゃないかなーって私は思ったりして、うん。そう。……ね、みずき」

「えっ、あっ、うん。そう。そうだよー、ゆかりは冷めてるからあんなだけど、手間掛かってるってその気持ちが嬉しいって人もいるんだよ」

「うーん……本当に喜んでもらえないなら、やっぱり……」

「んー、そこはまゆかちゃん次第じゃない?」

「え?」

「ん、ゆかり、どゆこと?」

「ほら、プレゼントってさ、もらってうれしいものとかあるけど、相手に頼まれないかぎりは、自分が思う相手の喜びそうなものをプレゼントするわけじゃない?」

「うん」

「だったら、これをもらったら相手が喜びそう、とか、もっと極端に言えば、これをもらって喜んでくれるような人がいいとか、そういうことになるんじゃないかな。だから、まあ、あんなこと言ったけど、手作りで心から喜んでくれる人も、中にはいるってことよ」

「そう、なのかな……」

「そうよ、むしろゴディバもらっても喜ばない連中だっているんだもの」

「うん……」

「そうだね。っていうか、わたしも1回しか会ってないけど、多分あの人はまゆかちゃんの手作りで心から喜んでくれると思うよー」

「ほっ、ほんとに……?」

「うん、それは保証するよー、客商売だからそれなりに人を見る目はありますからねぇ。よーし、じゃああたし、まゆかちゃんが素敵なプレゼント贈れるよう、何か考えとくから、また年明けたら作戦ねりまっしょー」

「うん、よろしくおねがいします」

「オッケー!」

(みずき、この子……)

(うん、相変わらずわかりやすいでしょ)

(そうね、不安になるくらい)