petit amour

まゆかのこと。

「すっかり遅くなっちゃいましたね」

「うー……さみ」

「ほんと、なんか一気に寒波が来たって感じしますね」

「あー、はやく帰ってコーヒー飲みたい」

「夜に飲んで、寝られなくなったりしませんか?」

「それが、意外と寝られるんだよねぇ」

「へえー、なんかうらやましい」

「ただ、耐性があるのか、眠気覚ましにもならないっていうね……」

「そうですか……」

「うう、さみい……」

「寒いのは苦手ですか?」

「寒い季節そのものは好きなんだけどねぇ」

「あ、わたしもです。冬って、空気が透きとおってて、すごく好きです」

「だねぇ。ピンと張り詰めた空気に、目が冴えるっていうかね」

「そうですね。ふう、でも息真っ白。かなり寒いですね」

「そだねぇ、きついー……」

「ふふ、あと少しですよ」

「うん。じゃ、ぼくこっちだから」

「はい、お疲れさまでした」

「お疲れー……あ」

「なんですか?」

「今夜は月が綺麗ですね」

「……え?あ、ほんとだ。空気が澄んでてきれいですね」

「……」

「うん?どうしたんですか?」

「なんでもないなんでもない。気をつけて帰んなよ、おやすみー」

「はい、それじゃ、おやすみなさい」