petit amour

まゆかのこと。

元気出していきましょう

「お疲れさまでした……」

「……まだしょんぼりしてんの?」

「こんなんじゃだめだ、ってのはわかってるんですけど……」

「ふーん……」

「……はぁ。じゃあ、失礼します……」

「……あ、そうだ」

「?」

「明日予定ある?」

「え、あ、明日は、はい……」

「そか、じゃあ今日この後の予定は?」

「え、うちに帰ってごはんつくって……」

「よし、じゃあぼくも出るから、お茶して帰ろ」

「え、ええ?」

「うん、ちょっとまってて」



「……で、そのお店ってのが、結構有名なバリスタさんが独立して立ち上げたらしくてさ」

「バリスタ?って時々聞くけど、よくわからなくて……」

「ああ、コーヒーを入れたり管理する専門の人ね。自家焙煎とかで、すごい美味しいらしいんだよねー」

「へぇ……」

「ねね、今度そこ行ってみない?ぼくも初めてだから、味の保証はできないけど、多分美味しいと思う」

「あ、はい、ぜひ……。……あの」

「うん?」

「もしかして、はげましてくれてますか?」

「えっ」

「なんだか、いつもよりすごいおしゃべりだし、急にお茶に行こうとか誘い出すし……」

「あー、そう、うん、まあ、それはー、そう、そうねぇ……」

「……すみません、心配掛けちゃって」

「んー、それはいいのいいの」

「はぁ、わたしやっぱりダメだなぁ、誰もいないと何もできないんです」

「……」

「昔っから、誰か前に立ってくれる人がいて、その後を付いてく感じで。こないだのお仕事も、初めて自分一人で対応したけど、あんな風に失敗して」

「……」

「わたし、やっぱりこの仕事向いてないのかな……役に立ってなさそうだし……」

「……あのさ」

「……」

「自分が役に立ってないとか、そういうこと言うのは、頼りにしてる人の期待を裏切ることにもなるんだよ」

「え?」

「いつも感謝してるのに、その相手が『役に立ってない、わたしのやってることは無駄だ』なんて卑屈になってたら、自分の感謝が伝わっていない、ってことになるからね」

「……」

「ミスはミスでしかたないし、次回注意したらいいと思うけれど、それを自分の価値と紐づけるのはあんまりよろしくないなぁ。きみの価値は、きみだけじゃなくて、きみの周りの人も決めることなんだよ」

「わたしの価値……。わたしに価値があるとか、役に立ってるとか、って、誰か思ってくれてるのかな……」

「んー、まあ、少なくとも一人はいるね」

「……えっ?」

「……」(クスッ)

「……。それって、もしかして」

「さっきの話たコーヒー屋、いついこうかね」

「……」

「どしたー?」

「……」(グスッ)

「ど、どした……」

「あっ、いえっ、なんだか、安心して、嬉しくなっちゃって……」(グスッ)

「そう……」

「グスッ……ふふっ……じゃあ、日曜日は予定ないから、明後日の日曜日は、どうですか?」

「え……あ、コーヒー屋ね。うん。いいよ。行こう」

「……ありがとうございます。あ、あと」

「うん」

「……ありがとうございます」

「同じこと二回言った」

「違います。これは別の、ありがとうです」

「……うん」